謹告

イタリア精神保健改革初期の19年を描いた名画「むかしMattoの町があった」の上映運動は、本日(2017年5月13日)をもって、終焉とさせていただきます。

イタリア国営放送が作成したこの映画は、精神病院という収容所型治療装置に疑問を持った精神科医バザーリアとその同志たちが、重い精神疾患の人々をも在宅で支え得ることを証明し、「精神病院を無くすための法律」を国に制定させる時点までの、艱難辛苦の物語でした。

その後日談ですが、イタリアは20世紀の末までに全ての精神病院を閉じました。精神病院主義のニッポン国では、こんな「精神病院のない社会」の出現を信じたくない方々も大勢おられます。しかし、上映運動はそんな風潮にささやかながら風穴を開けることができました。これは、各地で自主上映会を企画してくださった皆々様の「日本の精神保健を良くしたい」という熱烈な思いが結実した、とも言い換えることができます。ご協力に、深く感謝いたします。


ですが上映運動も5年近くたちますと、上映申し込みが勢いを失い、ほぼ途絶えるまでになりました。つきましては、ここで当事務局をいったん閉じさせていただき、あらたに、日本の精神保健改革に一石を投じられるような別の運動体を立ち上げよう、との結論に至りました。


映画「むかしMattoの町があった」のDVD(約3時間、日本語字幕版)は、現代書館から昨年9月に刊行された 『精神病院はいらない!:イタリア・バザーリア改革を達成させた愛弟子3人の証言』(大熊一夫編著、税抜き2,800円)に付録として添付されております。ご家庭で購読・鑑賞いただけますれば幸いです。

なお新事業として、「日本のMattoの町をどうする?」(仮)という大トーク集会を予定しております。10月9日(体育の日)の虎ノ門ニッショーホールです。「精神病院のないトリエステ」と「精神病院頼みの日本」を対比したドキュメンタリー映画のお披露目もあります。これは、ドイツで修行する日本人映像作家と大熊の共作です。ご期待ください。

【お問い合わせ先 180matto@gmail.com


180人のMattoの会代表  大熊一夫

副代表 伊藤順一郎

事務局長  福井里江